こうして覚えた日本語
漢字の口(くち)という字は、子供の僕にとっては、ひとつの小さな四角だった。四角い一区画、つまりワン・ブロックだ。この認識は片仮名のロ(ろ)に対しても、まったくおなじようにあてはまった。この口というワン・ブロックのまんなかに、横に向けて一本の直線を端から端まで引くと、見てのとおり口というワン・ブロックは上下ふたつに分かれて、トゥーブロックスとなる。二区画だ。そしてこれは日という字であり、その意味はディなのだという。ワン・ブロックが口であり、それを上下二つに区切ってトゥー・ブロックスにしただけで、口は日となる。そして意味上の堅密な連関は…
底本:『自分と自分以外──戦後60年と今』NHKブックス 2004年
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