ぼくの好きな大空間
最初に北アメリカ大陸を西から東へ自動車で横断したときは、その横断になんの目的もなかった。とにかく、ただ、横断してみたかったのだ。
あの広大な大陸は、地形が複雑だ。気象もそれに応じて変化する。この、地形と気象の変化だけを見ているだけでも充分にスリリングだと気づきはじめたのは、終点にしていたニューヨークに近づいてからだった。
トンボがえりをして、まったくおなじルートを、西へかえった。大陸という、たいへんな大自然を、充分に楽しんだ。東から西までつながっている空の、刻々と変化する色を見ているだけで、むくわれた…
底本:『アップル・サイダーと彼女』角川文庫 1979年
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