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評論・エッセイ

『路上にて』を買いそこなう

 日本語に翻訳されたときの題名を『路上にて』という、ジャック・ケルアクの『オン・ザ・ロード』を一九六二年、大学三年生のときに読んだ。そのときのペイパーバックをいまでも持っている。シグネットというペイパーバック叢書からの、一九六〇年の第八版だ。東京のどこかの古書店で買った。神保町の露店だったような気がする。値段は三十円から五十円くらいだったはずだ。
 バリー・フィリップスによる表紙絵を使った、一九五〇年代の終わりが近い頃のシグネットの雰囲気のよく出た好感の持てるペイパーバックだ。僕がいまも持っている一九六〇年第八版のペイパ…

底本:『ピーナツ・バターで始める朝』東京書籍 2009年

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