エッセイ「やがて、模型(プラモデル)たちが語りはじめる」第2回を公開
1966年創刊の模型専門誌「月刊モデルアート」(モデルアート社)の臨時増刊号『M-CATS』(エム・キャッツ)連載のエッセイ「やがて、模型(プラモデル)たちが語りはじめる」の第2回を公開しました。単行本未掲載の作品です。
1952年夏、日本の基地から飛び立ったアメリカの軍のセイバー、そして爆撃機が北朝鮮のダムを爆撃したりしていた。やっと10歳を超えた子供だった僕は、町の模型店でセイバーの組み立てキットを目にした。木材を自分で削って作るソリッド・モデルのはしりの頃のものだ。空を飛んでいるセイバーの勇姿を描いたカラー印刷された紙が1枚、セロファンの袋ごしに子供の胸を捉えた。組み立てれば絵のようなセイバーが自分のものになるのだ、と幼い僕は単純に思った。自宅で袋から取り出した部品は、小さな木片が六個だった。説明書の薄い紙を切り抜いて厚紙に貼り、何度もあてがっては確かめながら、こつこつと削っていくのだと知ったとき、模型作りにおける最初の挫折を僕は体験した。
(『エム・キャッツ』第3号[2001年8月]掲載)
2025年9月26日 00:00 | 電子化計画
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