VOYAGER

片岡義男.com 全著作電子化計画

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評論・エッセイ

やがて、模型たちが語りはじめる 2 セイバーとの出会い プラモデルによみがえる憧憬

 僕はついにセイバーを手に入れた。正確にはF–86セイバー「サンダータイガー」だ。僕にとっては模型が現物だから、現物を手に入れた、という言い方をしておきたい。プロの製作者が作った、じつに見事な出来映えの、あのセイバーだ。いろんなふうに手に持ってみたり、いろんなところに置いてみたりして、飽きることなく観察している。見続ける僕の思いを受けて、それはあるとき滑走を始め、飛び立つのではないか。あのセイバーと、いま僕は書いた。それはどのセイバーなのか。1952年の夏。前の年に勃発した朝鮮戦争は、休戦のための調停とは別進行で、激しさを増していた。…

『エム・キャッツ』03 二〇〇一年八月

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