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アーロン・マッケルウェイとは何者か?

 私立探偵のアーロン・マッケルウェイをご存知でしょうか?
 実在の人物ではありません。片岡義男の小説の中ではほぼ唯一と言ってよい、同一のキャラクターによるシリーズ作品の主人公です。マッケルウェイが初めて登場した『ハンバーガーの土曜日』が発表されたのは1976年。その後1984年までの間に全11篇が断続的に『ミステリマガジン』(早川書房)誌上に掲載されました。
 主人公のマッケルウェイはカリフォルニアを主なフィールドとする21歳の私立探偵ですが、実はカリフォルニア州で探偵業を行うにはライセンスが必要で、その条件は次のようになっています。

  • 18歳以上である(成人している)こと
  • 3年(合計6,000時間)以上の警察・消防・免許を有する探偵社・保険会社などでの「捜査業務経験」もしくは
  • 4年の警察科学の学士履修プラス2年(合計4,000時間)の実務経験 もしくは
  • 2年の警察科学・犯罪法・法務いずれかの準学士取得プラス2年半の実務経験があること。
  • その上で犯罪歴証明を添えて申請し、試験を経てやっと探偵業免許が交付されます。

(Wikipediaより。条件は州によって異なります)

 日本と比べるとかなり厳しいですね……。これらの条件を見ると、実際には21歳の青年が私立探偵を営むことはほぼ不可能です。作者自身もそのことはわかっていたようで「21歳という年齢設定によって、主たる舞台としてあてにしていたカリフォルニアも、アーロン自身もたちまち架空のものになっていった。このことはぼくにとっては好都合だった」と『ミス・リグビーの幸福』(早川書房/1985年版)のあとがきで書いています。

 このシリーズ、いわゆる「探偵もの」を期待して読むとちょっと肩透かしを食うかもしれません。先ほど紹介したあとがきの中で片岡も「不思議な探偵をつくったものだと自分でも思うが、じつはぼくはこのような変な設定がことのほか好きなのだ」と書いているほどです。
 また、先日X(旧Twitter)にて『昭和ミステリー大全集 ハードボイルド篇』(新潮文庫/1992)に収められた『ミス・リグビーの幸福』を読んだ方の投稿で「こうして他の日本産ハードボイルドと並ぶと、#片岡義男 の特異性がホント際立つ。別物。空気感がまったく違う」というものがありました。一体どんな物語なのか……それはぜひご自身で読んでお確かめください。

 ところで第1作の『ハンバーガーの土曜日』では、アーロン・マッケルウェイは青いチェックのカウボーイ・シャツに着古したリーヴァイスのジーンズ、腰には手作りのガン・ベルトといういでたちで登場します。愛車はジープ社製の四輪駆動ピックアップ・トラック、ホンチョ。そんな姿を画像生成AIに描いてもらいました。あなたの想像していた通りでしょうか?

 アーロンの衣装は作品によっても変わります。第2作目の『旅男たちの唄』では、ホワイト・ジーンズにオレンジ色のアロハシャツという姿でした。ちなみににホルスターはベルトだったり肩掛けタイプだったりしますが、常に.357マグナムモデル28(通称:ハイウェイ・パトロールマン)が納められており、車はジープ・ホンチョであることは変わりません。アロハ・シャツの柄が微妙ではありますが、雰囲気は出ているのではないでしょうか。

 アーロン・マッケルウェイシリーズに限らず、片岡義男作品はハードボイルド文体で書かれており、人物や風景などの描写が詳細であることはみなさんご存知の通りです。我こそは、と思う方はぜひお気に入りの片岡作品の1場面を画像やイラストにしてみませんか? SNSなどへの投稿もお待ちしています!

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