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『赤いボディ、黒い屋根に2ドア』、『タイを買い替える、黒い綿ニットで最大幅は5センチ』を公開

エッセイ『赤いボディ、黒い屋根に2ドア アメリカの雑誌広告でたどる275台の自動車の容姿』(東京書籍/1997年7月)、小説『タイを買い替える、黒い綿ニットで最大幅は5センチ』からの3作品(『Free & Easy』2016年1月〜3月号掲載)を本日公開しました。
※『タイを買い替える、黒い綿ニットで最大幅は5センチ』の他の回については、のちに『コーヒーにドーナツ盤、黒いニットのタイ。1960-1973』(光文社/2016年2月)に加筆の上収録されています。

 1945年代なかばから1970年代いっぱいくらいまでの、こうしたアメリカの一般的な雑誌は、いまとなっては貴重と言えば貴重かもしれないし、役目を完全に終わったものとしてとらえるなら、おそらくそのとおりでもあるだろう。しかし広告だけは違っていた。アメリカらしさの思いきって出ている広告であればあるほど、昔の雑誌に掲載された広告は、それを見る人に訴えかける力を失っていない。それは特に自動車の広告において、もっとも強く表現された。どの広告にも、そのスペースの構成に関して、科学的な考察と精密な計算の結果が、隅々までいきわたっている。きっちりと端麗にまとまった隙のなさは、それ以外の余計なものをなんら必要とせずに、そのまま確実に美の一種へと到達している。

(東京書籍/1997年7月)

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 時間も場所も登場人物も異なる、小さな3つの物語。

 1968年、梅雨の晴れ間の平日の午後、僕は原稿を書くために神保町の喫茶店に入った。200字詰めの原稿用紙で24枚の原稿をその日のうちに書かなくてはいけない。なにをどのように書くのか、という問題はすでに解決してある。夕方に店のウェイトレスの1人と食事をする約束をし、書き上げた原稿を編集者に渡したのちに彼女と待ち合わせた。そこで彼女の言葉を受け止めた僕は、想像の中にある情景を見た。

 小さなバーで男性2人が話す思い出話。一昨年、テキサス州エルパソで入ったクラシックな造りのバー。グラスを愛でながらウイスキーを飲んでいる最中に遭遇した衝撃的な出来事と、その後始末の一部始終。この地域ではよくある出来事のひとつに過ぎないのか……。

 ダーク・ブルーのスーツに黒いニットのタイ、そして黒い革の靴を履いた3人の男性。年齢も似たような30代後半だ。とある路地の奥のバーに入った3人は、カウンターのなかの美しい女性に対し、いきなりある歌の一節を歌い出し最後は見事なハーモニーで締める。そこにやってきた客の男性からリクエストを受けた3人は……。

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2024年3月15日 00:00 | 電子化計画

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