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小説『豆大福と珈琲』から1作品を公開

『豆大福と珈琲』(朝日新聞出版/2016年)から1作品を本日公開しました。

 雨降りの日の色が4月の空から消え、陽ざしが感じられつつある時間。西川律子は入った喫茶店でふと、自分のレインコートの裾に桜の花びらがついていることに気がつく。その花びらを愛でながらコーヒーを飲んだ彼女は、店を出て1階に降りる階段で一人の男性とすれ違う。オレンジ色の長袖のポロシャツの上に黒いナイロンのウィンド・ブレーカー、そしてジーンズにトレッキング・ブーツの彼は、店に先に来ていたもうひとりの男性と合流し、満開の桜の日から始まる物語の構想を話していく。そして彼らが店を出た後にやってきたのは……。
 短編小説集「豆大福と珈琲」の最後に収録されたこの作品は、これまでの4編の小説に登場した人物の一部と、この小説集の編集者と作者と思われる人物が同じ空間の中に現れるという、いわゆるメタフィクションの体裁を取っている。そして、4つの物語のまとめの役割も担っている。『豆大福と珈琲』『深煎りでコロンビアを200グラム』『鯛焼きの出前いたします』『この珈琲は小説になるか』の順番に読み、最後のこの『桜の花びらひとつ』を読むことで、作家の「鮮やかな企み」が鮮明となっていく。

こちらからお読みいただけます

2022年11月4日 00:00 | 電子化計画

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