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評論・エッセイ

新品にはとうてい真似のできないこと

 ニューヨークで仕事をしている日本人女性の友人がかつてぼくに書き送ってくれた手紙の一節を、いまぼくは思い出している。ニューヨークにおける自分の日常生活のこまごまとしたいろんなことについて書いたなかに次のような一節があった。
「いま、古い服の、白に疑っています。古い服を売っている店をたずね歩いては、昔のブラウスやシャツの微妙な白さを買い集めています。気に入ったのが、すでにいくつも手もとにあります」
 というようなことを、彼女は書いていた。十年ちかく前のことだ。
 この手紙をもらってから六か月ほど…

底本:片岡義男エッセイ・コレクション『自分を語るアメリカ』太田出版 1995年
『紙のプールで泳ぐ』新潮社 1985年所収

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