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評論・エッセイ

ジン・ボ・チョへの道

 都営新宿線の地下鉄で新宿から神保町まで、二百十円でいくことが出来る。三百八十円というようなときがくれば、そのとき多くの人々は、かつて二百十円だったことを忘れている。なにかの折りに昔の料金を知って、その安さに人々は驚くのだろう。逆に百二十円のときがくるなら、かつては倍近くもしたことを知り、そんなときもあったのかと、おなじく人々は驚くのだ。
 いま東京で地下鉄が次々に開通している。すでにある路線がひとつまたひとつと運行停止となり、駅への入口はシャッターが降りたまま、という時代がくる可能性について想像しながら、地下鉄で新宿か…

底本:『音楽を聴く2──映画。グレン・ミラー。そして神保町の頃』(第三部 この都電はジン・ボ・チョへ行きますか) 東京書籍 2001年

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