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評論・エッセイ

12月31日 1月1日のこと

 掘りごたつのある部屋へもどって来た彼女は、美しい身のこなしで彼とさしむかいの位置にすわった。
 さきほどまでふたりで遊んでいたバックギャモン用のサイコロをふたつ手にとり、テーブルのうえにやさしく転がした。
 サイコロはテーブルのうえに音をたてて転がり、すぐに静止した。ふたつとも三の目を出していた。彼女は歓声をあげ、手を叩いた。三のぞろ目、三十三だ。三十三は、今年の彼女の年齢だ。
「今年もきっといいことがあるんだ」
 ふたつのサイコロを見ながら、彼が微笑して言った。


底本:片岡義男エッセイ・コレクション『「彼女」はグッド・デザイン』太田出版 一九九六年
『すでに遥か彼方かなた』角川文庫 一九八五年所収

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