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評論・エッセイ

五つの夏の物語

1
 常夏、という種類の夏がある。一年をとおして季節はひとつ、そしてそれは夏。毎日、目が覚めるたびに、自分は夏のなかにいる。一年じゅう、そのような日が続く。雨が降っていて気温の低い日、あるいはハリケーンが接近しているときでも、基本が夏であることに変わりはない。常夏とはよく言ったものだ。文字どおり、そこでは常に夏なのだ。このような常夏の場所は、僕にとってはハワイしかない。
 日本にいるときに体験する四季の変化や季節のうつろいは、かたときも止まることなく経過し続ける時間というものを、象徴的に感じさせてくれる。そ…

底本:『坊やはこうして作家になる』水魚書房 2000年

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