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エッセイ

『オール・マイ・ラヴィング』のシングル盤

 おもに仕事の打ち合わせの場所として、その頃の僕は、その小さな喫茶店を毎日のように利用していた。ある日、彼女は、そこにいた。ウェイトレスをしていた。僕の注文を彼女が受けてくれた。注文したものを彼女がテーブルまで持ってきてくれた。水も注ぎ足してくれた。夏の始まりの季節だった。
 その日以来、その喫茶店へいくといつも、彼女がいた。彼女を見る機会が重なれば重なるほど、僕は彼女の魅力にひかれることとなった。彼女の顔立ちは、シャープに彫りの効いた美貌と言っていい出来ばえだった。表情は少なく、どちらかと言えば冷たい印象があった。彼女…

底本:『坊やはこうして作家になる』水魚書房 2000年

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