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評論・エッセイ

パーマの帝国

「パ」と「マ」のふたつの片仮名に、音引きの縦棒「ー」を一本加えて作る「パーマ」という言葉は、まだ充分に現役であるようだ。太平洋戦争が終わるのとほとんど同時に、この言葉が日本じゅうに広がった。戦後の日本でいっせいに始まった、民主主義のひとつだったろうか。主として女性のまっすぐな髪を、電気じかけでカールさせる、あるいはウェーヴさせることに、日本の人たちはいっさいなんの懐疑の念もなしに、賛同した。したがってパーマを重要な営業品目とした美容院が、日本のいたるところに出来た。それ以来のパーマだ。
 長方形の看板にパーマとあるだけで…

底本:『フリースタイル』2018年8月

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