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模型飛行機の午後

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 週末の午後の待ちあわせの場所へ、彼女は、紙包みをかかえてあらわれた。ふと入ったホビー・ショップでみつけて衝動買いしたのだと言いながら、彼女は包みのなかのものをぼくに見せてくれた。

 ゴム動力で飛ぶ模型飛行機の組立てキットだった。発泡スチロールでつくった胴体および主翼を持つ、ウィング・スパン六十三センチメートルの、流麗な美しい飛行機が、紙箱に写真でのっていた。かたちの美しさにひと目惚れして買ってしまった、と彼女は言っていた。

 町を散歩してから、ぼくたちは、彼女が自分で持っているオフィスへいった。そこで、ふたりして模型飛行機をつくった。二時間ほどの作業で、未塗装のまっ白い機体の飛行機が出来あがった。マルティ・ギア・ボックスの、よく飛びそうな飛行機だった。

 美しく成熟した大人の女性である彼女が、ゴム動力で飛ぶ模型飛行機を衝動買いするという遊び心をぼくはたいへん面白く思った。出来あがった飛行機をオフィスのバルコニーで彼女に持たせ、ぼくはオフィスのカメラで彼女の記念写真を撮った。雨が降りはじめていた。

 からっと晴れた日にどこかへふたりで飛ばしにいこうと約束し、ぼくたちはまっ白いその飛行機をオフィスのデスクの上に置き、再び町へ出ていった。雨の町は、夕暮れの素敵な時間になろうとしていた。

底本:片岡義男エッセイ・コレクション『「彼女」はグッド・デザイン』太田出版 1996年

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2017年6月22日 00:00
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