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評論・エッセイ

移民の子の旅 2 優良なる労働者

 オホーツク海やベーリング海に鯨がたくさんいるということが、アメリカその他、各国の捕鯨業者たちに知れたのは、一八四〇年ころだったという。
 当時の社会にとって、鯨は、たいへんに便利なものだった。油は、燈火ランプで燃やしたりロウソクにかためたりして明かりのもとになったし、機械油としても使えた。骨はいまのプラスティックやゴムのかわりに重宝した。いろんな細工物をこしらえることもできた。肉は食用になった。
 便利だから需要は多く、捕鯨業はとても盛んだった。オホーツク、ベーリング両海域での捕鯨は、鯨の大群の発見と共に、年…

『ミステリマガジン』一九七五年九月号

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