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評論・エッセイ

単純に置き換えた英語

 単純な置き換えでことは足りるはず、と多くの日本人に思わせるにいたった最高の責任は、学校における英語教育にあるはずだ。単語の意味の置き換えは、日本の英語教育の基本だ。学習するすべての単語に関して、使われかたをいっさい抜きにして、ほとんどの場合ただひとつだけの日本語による意味への、置き換えがおこなわれる。
 これは英語の勉強ではなく、捩じれたかたちでの日本語の練習だ。このような置き換えを土台として叩き込まれたおかげで、頭に浮かぶ日本語の文章の単語ひとつひとつに、乏しい蓄積のなかからみつくろった英語の単語をあてはめたり置き換え…

底本:『日本語で生きるとは』筑摩書房 一九九九年

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