No.16|高橋美礼「あの頃の表紙と、私が手がけた電子書籍の表紙。」
子どもの頃から、私の実家の本棚には片岡義男小説が並んでいた。『ロンサム・カウボーイ』や『10セントの意識革命』は晶文社の犀のマーク、『彼のオートバイ、彼女の島』や『幸せは白いTシャツ』は角川文庫の真っ赤な背表紙。床に寝転んだ姿勢で見上げたり、本棚の前を通り過ぎるとき指先でなぞったりしながら、いつの間にか小説のタイトルと表紙のビジュアルだけが先にインプットされていたのだと思う。実際に小説を読み始めるよりも前から、小説世界のイメージは勝手に頭の中でふくらんだ。後に、その想像は大きくはずれていないと気づいてからはさらに、記憶の中のビジュア…
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