写真を撮っておけばよかった
過去は巨大な教訓だ。偉大な反省材料だ。教訓も反省も、僕の過去のなかにすら、おそらく無数に存在している。過去は文字どおり、とっくに過ぎ去った時間なのだ。戻ってはこない。しかしその過去のなかにあり続ける教訓や反省材料は、これから来るであろう時間のなかで、生かすことが出来ないわけではない。
自分の過去のなかに拾うことの出来るどのような教訓や反省材料をめぐってであれ、たとえば、そのとき僕はそうすべきだったのにそうしなかったのは残念だといまの僕が思うというようなことは、ただひとつのことを別にすると、僕にはない。そのただひとつのこと…
底本:『坊やはこうして作家になる』水魚書房 2000年
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