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評論・エッセイ

一月一日、消印はモンパルナス

 消印をはっきりと読むことが出来る。1992年1月1日、モンパルナスだ。かつて僕が少しだけともに仕事をしたことのある、いろんな意味でたいへん素敵な女性が、数年前にフランスへ渡り、大学へ通って勉強をしている。その女性が、季節の挨拶の手紙を、何年かぶりで僕に書き送ってくれた。その手紙に貼ってあった一枚の切手とその周辺の、完成された美しさが僕の気持ちをとらえた。
 1月初めの晴れた日の午後、この手紙を受け取った僕は、二階のバルコニーの温室に小さなテーブルを持ち出し、黒い紙を敷き、その上にこの封筒を置き、切手を中心にしてその一角…

底本:『昼月の幸福──エッセイ41篇に写真を添えて』晶文社 1995年

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