物語を買いまくる時代
ふと気がつくと、いまの日本の世のなかには能書きがあふれている。さまざまな物に能書きがついている。能書きは物語と言いかえてもいい。あるいは、もっと広く、情報と言ってもいい。たとえばレストランに入ると、どうでもいいような料理のひとつひとつに、そしておなじくどうでもいいようなワインの一本一本に、イメージをこってりと付加する目的の能書きがつけてある。どうでもいいようなものほど、能書きをまといつけている。そしてその能書きは、陳腐さをきわめている。まともな情報の伝達力などとても望めない、安っぽく薄っぺらな物語だ。
どうでもいいよ…
底本:『アール・グレイから始まる日』角川文庫 1991年
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