一本の鉛筆からすべては始まる
いま僕は一本の鉛筆を手にしている。ひとり静かに、落ちついた気持ちで、指先に一本の鉛筆を。たいそう好ましい状態だ。少なくともいまはひとりだけでここにいる自分というものを、その自分が指先に持つ一本の鉛筆は、すっきりと増幅し際立ててくれる。いまきみは孤独だ、とその鉛筆は僕に言ってくれている。
孤独な僕は、I think better with a pencil in my hand.というワン・センテンスを思い出す。鉛筆を手にしていると自分はより良く考えることができる、という意味だ。ずっと以前にどこかで読み、それ以来いまも…
底本:『なにを買ったの? 文房具。』東京書籍 2009年
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