エッセイ「クルマのある風景」より2作品を公開
雑誌『Free & Easy』(株式会社イーストライツ)の特別編集モデリスタマガジン『KNOCK OUT』に連載されたエッセイ「クルマのある風景」の第2回、第3回を公開しました。単行本未掲載の作品です。
アメリカの雑誌から、自動車と直接にあるいは間接につながった絵柄を3点、選んで観察する。アメリカにおいて、自動車と資本主義とは、どの国におけるよりもはるかに密着した関係を持っていることを僕は受けとめないわけにはいかない。自動車は移動の手段だが、ではなぜそんなに移動しなくてはいけないのか。アメリカを前方に向けて推進させていく力の基本は、資本主義の原理だからだ。理論としての資本主義ではなく、現実という現場での資本主義だ。
(『KNOCK OUT』[Spring 2000]掲載)
同じ写真を3通りにトリミング複写したものだ。角度がほんの少し変化するだけで、場面から受けとめる印象は大きく違ってくる。この中の、最もドラマティックな1枚から小説をひとつ作るのは簡単だ。この1枚から長編を発想していくことも可能だし、あっと言うまに短編をひとつ、頭のなかに組み立てることも、決して難しいことではない。1枚の写真は、それが撮影された瞬間を固定したものだが、その瞬間の前には、撮影される瞬間に向けて流れていた時間があり、撮影された瞬間のあとには、撮影されたあとに流れ続けた時間がある。1枚の写真というものは、実は時間を豊富に持っているのだ。
(『KNOCK OUT』[Summer 2000]掲載)
2025年12月19日 00:00 | 電子化計画

