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エッセイ「やがて、模型(プラモデル)たちが語りはじめる」より1作品を公開

模型専門誌「月刊モデルアート」(モデルアート社)の臨時増刊号として発行されていた『M-CATS』(エム・キャッツ)連載のエッセイ「やがて、模型(プラモデル)たちが語りはじめる」の第5回を公開しました。単行本未掲載の作品です。

 僕に物心がついていくための助走路は、戦争の時代を背景にしている。敗戦を背景にして物心がついたとは言っても、戦争のものはほとんど知らない。時代の産物としての自分とはなんなのか、ということについて説明しようとすると、きりがない。その断片のひとつが、アメリカのナショナル・アーカイヴスからの1葉の白黒の写真だ。マーシャル群島の上空、エニウェトック環礁の近くをチャンスボード社のF4U-1Aコルセアが2機、並んで飛んでいる。コルセアという戦闘爆撃機と僕は、同じ時間を共有している、とだけまず言っておこう。このコルセア、そしてこれだけではなくすべてのコルセアを僕は知っている、という言い方をしてもいい。エニウェトック環礁の上空で、コルセアの機体が受け止めている暑い陽射し、エンジンの音、排気の匂い、胴体や主翼に掌を重ねたときの感触など、すべてを僕は知っている。

(『エム・キャッツ』第6号[2002年5月]掲載)

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2025年11月7日 00:00 | 電子化計画

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