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短編小説集『短編を七つ、書いた順』から『花柄を脱がす』を公開

短編小説集『短編を七つ、書いた順』(幻戯書房/2014年)所収の『花柄を脱がす』を本日公開しました。

28回目の誕生日の日、高村初音は近所の商店街にある洋品店で、ハンガーに吊るされた1枚の半袖シャツに目を留める。淡いベージュの生地に、ほのかな赤い色の簡素な花模様が散らされている。その柄を好ましく思った彼女は、用事を済ませたのち、一度は通りすぎたその店に引き返しシャツを購入する。そして、そのシャツを着て友人で写真家の河原直樹に会いに行く。買ったばかりのシャツを着た初音を見た河原は、あるインスピレーションを得て、これから撮ろうとする写真の被写体としてそのシャツを購入する。初音が直感的に自分に似合うと感じたシャツは、実は彼女に似合うのではなく、彼女がシャツに似合うのだと言う河原。シャツの中に夏という季節と、そこにいるひとりの女性の痕跡を感じ取った河原は、このシャツを主役とした写真を撮ろうと考える。
「痕跡とは、息づかいや脈動。女であることを主張したりはしないけれど、かそけきもの静かさのなかに確実にあるはずの、淡い気配としての女の痕跡」

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2023年4月7日 00:00 | 電子化計画

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