2010年から2013年にかけて雑誌に連載された長編小説『さらば、俺たちの拳銃』を公開しました。これまで単行本未刊行の作品であり、初の電子書籍化です。

早川書房『ミステリマガジン』2010年10月号で特集された『片岡義男を読む幸福』。そこに第1回が掲載され、全18回／32話で完結したのがこの長編小説『さらば、俺たちの拳銃』です。主人公のひとり、ジョーこと国崎正治は原書でミステリーを読み、翻訳ミステリーからの引用を多用しますが、ここで言うミステリーとは、例えば、カーター・ブラウンやミッキー・スピレイン、初期のフレドリック・ブラウンといった、チャンドラーやロスマク（ロス・マクドナルド）以降の軽ハードボイルド。そしてこの小説の表題にもなっている『さらば、俺たちの拳銃』という映画のタイトルに仕掛けられた二重三重の物語構成は、そのまま1961年公開の日活映画『紅の拳銃』と翌年の赤木圭一郎の死、同年の小林旭「渡り鳥」シリーズ完結といった出来事が続いた、当時のアクション映画を取り巻く状況に重なります。そこにオマージュだけでなく「解かれない謎」や、その後に現れた社会派ミステリーへの視点も加えたミステリー史的な作品として、専門誌に連載された片岡義男の単行本未刊行作品がまとめて読めるのは、それこそ「片岡義男を読む幸福」です。

こちらからお読みいただけます