短編小説の航路『ただそれだけ』公開!
「短編小説の航路」シリーズ新作公開
書き下ろし作品「短編小説の航路」シリーズの新作『ただそれだけ』を公開しました。片岡義男.comだけで読める作品です。
『ただそれだけ』は、作家の頭の中についての小説なのではないかと思うのです。作中、作家の美加子はこれから書く予定の作品について、細かく設定を作り、構成を考えます。その過程は詳しく描かれているので、なんとなく、その小説を読んでしまったような気分にさえなるのですが、それはあくまでもメモであり、だから作中で美加子は「なぜか暑さを感じない。このあたりを書くのは難しい」とノートに書きます。内容だけでは小説にならないのです。この作品では冒頭に、美加子がどんな風に写真を撮るかが描かれますが、ここでも撮っただけでは写真は完成しません。作家は、こんな風にして作品を作っていくという過程の小さな積み重ねを小説にした、この作品もまた、同じように作られていると想像するのが小説を読む楽しみだと思います。
2020年12月23日 00:00 | 電子化計画