人は誰もが物語のなかを生きる
僕はいろんな種類の文章を書いている。小説もあればエッセイもある。評論のような文章もたまには書くし、最近では詩の本も一冊書いた。しかし、書いている当人である僕の目で見ると、自分が書く文章はすべて物語だ。すべてはストーリーだ。どれもみんな小説だ。
小説を書くことが僕の仕事のようになっている。当人にとっては仕事ではなく、趣味や遊び、あるいは娯楽のようなものだ。いろんな言いかたが出来るだろうけれど、もっとも誤解が少なくてすむはずだと僕が思う言葉を使うなら、小説を書くことは僕にとってはゲームだ。自分で考えて自分自身に対してしか…
底本:『アール・グレイから始まる日』角川文庫 1991年
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