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評論・エッセイ

恋愛小説のむこう側

 ごく普通のスタイルで小説を書こうとするとき、主人公という役をつとめてくれる女性と男性を、ひとりずつ作らなくてはいけない。このひと組の男女がなんらかの関係を作り、その関係を変化させ、変化は何重にも重なり、その重なり合いのなかをふたりでくぐり抜けることによって、ふたりにとって肯定的な意味のある変化を体験していく。
 一般的な小説はほとんどがこのような骨格を持っている。そして、男女の関係のあれやこれやについての比重が大きくなっている小説のすべてを総称して、恋愛小説と人々は呼んでいるようだ。僕自身は、なにを書こうともそれは小説…

底本:片岡義男エッセイ・コレクション『「彼女」はグッド・デザイン』太田出版 1996年
『アール・グレイから始まる日』角川文庫 1991年所収

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