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評論・エッセイ

ミッキーマウスの両耳

 ミッキーマウスをふたつ買った。ふたり、と言うべきか。ひょっとして、二体か。あるいは、二匹。上半身の高さが十一センチほどなので、ふたつでいいのではないか。良く出来ている。赤い半ズボンから黒くて細い脚が出ていて、その先端はあの大きな靴のなかだ。両脚は黒い紐だから、テーブルの角にすわらせて両脚をその角から下に降ろせば、両脚は空中にぶらぶらしていることになる。脚ぶらミッキー、という商品名だ。
 テーブルの角をはさんで、ふたつのミッキーのうちひとつは絵に描いたような脚ぶらだ。もうひとつは、片脚を膝で組んでいる。この様子も素晴らし…

底本:『キネマ旬報』2018年11月上旬特別号

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