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評論・エッセイ

ローマ字で書かれた駅名、という謎

『ザ・トーキョー・トランジット・ブック』というタイトルの、 八十四ページの小さな本は、たいへんに感動的だった。
 日本語はさっぱりわからないけれど英語は自由になる人たち、つまり外国の人たちのために、東京の交通機関について英語でおおまかに説明し、利用のしかたについても解説を試みた、勇敢な本だ。この小さな一冊の本を仲介に、交通機関をなんとか利用していくことをとおして、東京というひとつの謎の一端に接していくひとりの外国人を想像するとき、そこにある種の感動が生まれてくる。
 解説文は、東京の交通機関のありかたに関し…

底本:片岡義男エッセイ・コレクション『自分を語るアメリカ』太田出版 1995年
『ノートブックに誘惑された』角川文庫 1992年所収

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