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片岡義男.com 全著作電子化計画

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評論・エッセイ

日本語で生きるとは

「言語は実用の具であるとともに、人としての尊厳を支えるものである」
 と書いた一枚の情報カードを、さきほどから僕は見ている。何年も前、本あるいは雑誌から、書きとめたものだ。僕自身の言葉ではない。ほかにもおなじようなカードが、いま僕のデスクの上に何枚もある。
「日本人の傲慢さは、言葉で関係を作ろうとしないことである。言葉をつくして、双方のために、論理を重ねようとしないことである」
 というカードも見つかった。「言葉で関係を作る」ことの、おそらくもっとも大きな例は、「言葉をつくして、双方のために、…

底本:『坊やはこうして作家になる』水魚書房 2000年

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