片岡義男.com 全著作電子化計画

MENU

エッセイ

ただそれだけの十六年

 平成という元号の始まった瞬間を、多くの人がそうだったように、僕もTVニュースの画面で見た。このときのことはいまでもよく覚えている。それはたいへんに異様な光景だったからだ。おそらく官邸のどこか、いつも記者会見に使うような部屋だったのだろう。その部屋の一角には、会社の事務用品としてはミーティング・テーブルと呼ばれている、横に細長い、なんとも言いがたく貧相な造作と出来ばえのテーブルが置いてあり、そのテーブルの中央から少しだけずれた位置に当時の官房長官が椅子にすわっていた。この人物についてそのときの僕はなにも知らず、風貌を見たのもそのときが…

底本:『自分と自分以外──戦後60年と今』NHKブックス 2004年

このエントリーをはてなブックマークに追加