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評論・エッセイ

君はなぜ恋しいか

 歌謡曲、あるいは流行歌、どちらでもいいけれど、もの心についてから現在にいたるまで、僕はそれらとどのような接触を持っただろうか。もの心ついてから現在にいたる期間は、日本の戦後五十数年という期間そのままだ。
 幼時から子供の頃をへて少年時代の終わりまで、日本はラジオの時代だったようだ。どこの家庭にも、というわけにはいかなかったかもしれないが、家庭にはラジオがあった。人々はそのラジオをとおして、たとえばそのときどきの流行歌を受けとめた。レコードとその再生装置は、ラジオにくらべると、数はまだずっと少なかった。もはや戦後ではない…

底本:『音楽を聴く』(第三部「戦後の日本人はいろんなものを捨てた 歌謡曲とともに、純情も捨てた」)東京書籍 1998年

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