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書評

飛田の絶望感、これは日本そのものの物語だ

〈書評〉井上理津子著『さいごの色街 飛田』

 飛(とび)田(た)は大阪市の西成区にある。地下鉄の動物園前駅を降りて南側の出口を上がり、動物園前一番街という商店街をいくのが、現在では飛田への唯一の道だ。百六十軒ほどの「店」があり、昼夜合わせて四百五十人ほどの「おねえさん」がそこで「仕事」をしている。「店」に入ったすぐのところで「おねえさん」と「曳き手のおばさん」が客を待ち、交渉が成立すればただちに二階の小部屋へ、という単刀直入な世界がそこにある。
 一九一二年という昔、難波新地乙(おつ)部(べ…

底本:『週刊朝日』2011年12月9日号

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