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書評

いま日本語は“既知の壁”に囲まれている

〈書評〉坪内雄藏著『國語讀本 尋常小學校用』

 国語が日本国家によって教科として制定されたのは明治三十三年、一九〇〇年のことだった。この頃の教科書は文部省による検定制という自由競争下にあり、一定の様式だけは守った凡庸な内容のものばかりのなかに登場したのが、全八巻の『國語讀本 尋常小學校用』という教科書だった。シェイクスピアの翻訳で知られる坪内逍遙が本名の坪内雄藏で執筆・作成した。明治三十六年に教科書は国定制度に変わり、『國語讀本 尋常小學校用』は三年の短命に終わった。
 日本近代の教育史に残…

底本:『週刊朝日』2012年3月9日号