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ラッキーなストライクの思い出

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 英語で「ラッキーなストライク」とはなんのことですか、と訊かれて正しく答えることの出来る人は、少ないのではないだろうか。ラッキーもストライクも、片仮名書きされて日本語になって久しい。もとは英語だなどと思う人も、もはやいないと言っていいほどに、どちらも日本語だ。だから日本語としての意味しか持っていない。

 ラッキーはまだいいとして、ストライクは日本語では完全に野球用語でしかない。これはたいへんに困ったことなのだが、なぜ困るのかその理由がそもそも見当がつかない、というあたりに多くの人たちは生きている。野球用語のあのストライク以外の意味で使うときには、たとえばストライキのように、かたちを変えなくてはいけない。そしてストライキには、日本語としてのストライキの意味しかない。

 英語のストライクには、金鉱脈や石油の油脈などの「発見」という意味がある。ここから意味はさらに広がり、始めた商売の「大当たり」というような意味も伝えることが出来る。それにラッキーがついてラッキー・ストライクなのだから、これはとても運のいい大当たりなのだ。ラッキー・ストライクという言葉を名前にした煙草は、金鉱脈や石油の油脈の発見という、アメリカ史のなかに歴然とあるラッキーの延長線上にイメージされた、アメリカで唯一のデザイン煙草だ。

 ここにある三点の広告は、一九五十年代のものではないかと思う。煙草のパッケージ・デザインは、オリジナルとは少しだけ異なっている。初めはデザインの一部に緑色が使われていたのだが、この色の印刷インクの材料が、戦争遂行に必須の物資に指定され、民間での使用は制限された。だからごく早い段階でまんなかの赤丸の印象が変化した。ただしそのおかげで重い印象は払拭され、デザインはぜんたいとして軽快さを獲得した。ゴールドとオイルというふたつのラッキーの上に立ち、次のラッキーを求めて戦争を支えたデザインだった。

出典:『Free&Easy』2001年6月号


『Free&Easy』 アメリカの色とかたち
2017年12月25日 00:00
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