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世界はフリッジのなかへと消えていく

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 冷蔵庫のことを英語でいちばん普通にはリフリジェレイターと言う。これを略すとフリッジという日常語になる。もうひとつ、リーファーという省略語もある。これも普通には冷蔵庫を意味するが、冷蔵トラックなども意味の広がりのなかに含まれる。

 フリッジもリーファーも、まだ日本語になっていない。あらゆる英語が片仮名書きされて日本語になっていくように思えるが、必要のない言葉は日本語になったりはしない。冷蔵庫が日本の日常となじんですでに久しく、冷蔵庫はいまでも冷蔵庫のままだ。コンビニへいけばいつだって食べるものは手に入るのだから、冷蔵庫という装置が二次的な意味しか持たない人は、いまの日本にたくさんいるはずだ。

 アメリカでは日常の食料はまだフリッジのなかに買い置きされている。世界の食料資源は工場で缶詰、袋詰め、箱詰め、瓶詰め、ビニール・パックなどの食料となり、アメリカの家庭のフリッジのなかへと消えていく。それらは夜と言わず昼と言わず、かたっぱしから消費されてアメリカの人たちをますます肥らせ、ほとんど全員を病気にしていく。食料資源はフリッジを経由して、病気になった多くの人たちのかさむいっぽうの治療費、という数字になる。

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 かつてのアメリカで理想的な典型だった四人家族が、自分たちの家の前にいる写真を見てほしい。彼らは塵の山に囲まれているように見える。しかしこれは塵ではなく、四人が一年間に消費するフリッジ食料のトータルを、現物で積み上げたものだ。どう見ても塵にしか見えないところが、いまさらのように啓示的ではないか。アメリカでスーパー・マーケットの食品売り場を歩いていると、塵の山のなかを踏み迷っている錯覚に、強くとらわれることがある。こんなものがいったい世界のどこで生産されているのだろうかと、不思議な気持ちになる。

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 フリッジの内部が食料品で満たされている様子が、カラー写真でフリッジの広告に使われたいくつかの例がここにある。新型のフリッジというアメリカの誇りのなかには、このような食品が詰まっていた。食べたくなるのはそのような食品だけである、という条件づけはとっくに成功を収めていたから、いつなにを食べたくなっても、イッツ・イン・ザ・フリッジだったのだ。

出典:『Free&Easy』2001年2月号


『Free&Easy』 アメリカの色とかたち
2017年12月18日 00:00
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