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古き佳きアメリカとはなにか

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 ここにあるのは一九四一年のフォードの新車の広告だ。当時の雑誌に掲載されたものだが、この頃の雑誌広告の世界では、写真ではなく人が描いた絵が、グラフィックスの中心だった。カラー写真が広告に盛んに使われるようになったのは、戦後のことだ。

 近隣や地域社会という、まさに絵に描いたような当時のアメリカの草の根が、颯爽とそこに登場したフォードの新車によって、さらによりいっそう結束を固くしていくという主題で貫かれた、シリーズのような広告だ。

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 不干渉による孤立をきめこんでいたアメリカは、ヨーロッパにおけるナチス・ドイツの武力的な拡大、そして中国大陸における日本との深刻な衝突と、ふたとおりの敵を相手にしなければいけないことになった。第二次世界大戦、そして太平洋戦争だ。

 アメリカは国と市民の総力をあげて、このふたつの戦争を遂行した。トータル戦争と呼ばれたこの戦争によって、当時のアメリカがすでに持っていたさまざまな力は何百倍にも拡大され、潜在的な能力にとどまっていた力は、掘り起こされてかたっぱしから具体化され、トータル戦争のトータル戦力へ巨大に加算されていった。

 この戦争を遂行して勝ったことをとおして、アメリカの力は途方もなく拡大された。このことがあったからこそ、次の時代である一九五十年代の繁栄が可能になった。繁栄はそこで終わることなく、現在にいたってもまだ続いている。続いているだけではなく、それは世界の一極大国として、轟々と更新されてもいる。

 ヨーロッパのヒトラーとアジアのジャパンというふたつの敵を向こうにまわし、国をあげての総力戦へと燃え上がろうとしていた、戦争直前の時代の若いアメリカ。古き佳きアメリカは視点によっていくつもありえるが、最大のものはこれなのだ。ヒトラーとジャパンという敵に向けて、あらんかぎりの技術力と物質力、それに愛国心というパワーを注ぎ込んだアメリカ。懐かしくも初々しい、二度とないあの時代の自分たちの国。

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 人になぞらえるなら、当時のアメリカは少年から青年へと成長していく男性だった。そしてこのふたつの戦争は、その少年にとっては割礼だった。あのときの、一度きりの、思い出深い割礼の儀式。思えば日本はその割礼に、少なくとも半分は、舞台を提供したのだった。

出典:『Free&Easy』2000年3月号


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2017年11月23日 00:00
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