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評論・エッセイ

家庭から遠かった男たち

 自分の家庭以外のところで食事をすること、たとえば街の軽食堂で昼食にせよ夕食にせよ、一回の食事としてなにかを食べることは、子供の頃の僕にとっては、家庭を中心とした日常のなかに成立しているルーティーンから、明らかに逸脱した出来事だった。
 それは常ならざること、特殊なこと、めったにないこと、例外的なことだった。食事は自宅で家族とともに食べるものだった。食事の時間よりも早くに帰宅し、着替えをして顔や手を洗い、みんなそろってきちんと食卓につき、いただきます、と言ったのちに、会話をしながら食べるのが、守るべきかたちだった。
底本:『自分と自分以外──戦後60年と今』NHKブックス 2004年

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