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評論・エッセイ

『妻』

戦後の日本はやがて崩壊する仕組みのなかにあった。
一九五三年の映画がそのことを静かに教えてくれる。
 一九五三年(昭和二十八年)の四月に公開された『妻』は、林芙美子の『茶色の目』という小説を原作としている。例によって例のごとき小説を、脚本家はかなり忠実に脚色したようだ。撮影は玉井正夫、そして美術が中古智、という名前をクレディットに見るのは、僕にとってはうれしいことだ。
 中川十一と美種子みねこ(旧姓・新村)の夫妻(上原謙・高峰三枝子)は結婚して十年になる。子供はいない。おたがいに気持ちは離れ…

底本:『映画の中の昭和30年代』草思社 2007年

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