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評論・エッセイ

傘の記念写真を撮った日

傘の記念写真を撮った日



 傘は絵になる、という法則は充分に成立する、と僕は思う。日常生活のなかにすっかりなじんでいるから、もはや誰も傘に新たな視線を向けることはないようだが、『傘と道路が本のなかで出会う』で書いたとおり、開いた状態でもあるいは閉じられていても、傘はなんとも言いがたく奇妙なかたちをしている。人間と雨との関係のなかに、雨に濡れたくない、という領域がある。その領域のなかに実用的に成立して以来ずっと、傘はいまあるかたちで続いてきた。傘をさして雨のなかを歩いている人を写真に撮…

底本:『ホームタウン東京──どこにもない故郷を探す』ちくま文庫 二〇〇三年

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