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評論・エッセイ

日本のMの字

日本のMの字



 この二点の、どちらの写真においても、撮っているときにはまったく意識しなかったのが、安価なハンバーガーの店のMというローマ字のロゴだった。このMの字が、いまの日本のこのような光景のなかにすっかり溶け込み、なじみきっているではないか。日本のものとなりきったその様子は、とてもアメリカ渡来のものとは思えない。ずっと以前に日本で生まれ、それ以来いたるところに日本のものとしてあり続け、いまでは誰の意識にものぼらないもののひとつ。このMの字はそんな風格をすでに獲得している。
底本:『ホームタウン東京──どこにもない故郷を探す』ちくま文庫 二〇〇三年

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