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片岡義男.com 全著作電子化計画

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評論・エッセイ

なにもしなかった4年間

 高等学校の三年生という状態が終わりに近づくにつれて、卒業出来るのかどうかの問題が、僕の前に立ちあらわれてきた。このこととその顛末については、すでに書いた。卒業できるかどうかの問題をかたわらに置くと、つまり卒業は出来ると仮定して、そのあとどうするのかという問題が、入れ替わりにあらわれた。ちょうどその頃、クラス分けはそのまま、卒業後の身のふりかたによって、就職組と進学組とのふたつに、分けられた。おまえはどっちだ、と友人たちは言った。どちらだろうか、と僕は思った。
 就職という言葉に、実感はまるでなかった。就職したらどこかで…

底本:『坊やはこうして作家になる』水魚書房 2000年

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