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エッセイ

それを環境と呼ぶか

 個性や自分らしさなどは、自分はこれではなくあれを買ったという軽度の、あるかないかの微小な差異にもとづく、形而下の出来事でしかない。そんな自分をはるかに越えた価値、つまり普遍性という形而上の出来事への加担こそ最大の生きがいであるはずなのに、そこから思いっきり遠いところにいるひとりの自分という種類の人が持つ最大の特徴は、自分の頭で考えられることしか考えない現状、すなわち、なにひとつ正しくは考えられないというありかただ。
 そうした正しくない人たちの日々が作り出したすべての景色の本質は、我勝ちに主張される自分とその都合という…

底本:『ホームタウン東京──どこにもない故郷を探す』ちくま文庫 2003年

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