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評論・エッセイ

夏の陽ざしとモノクロームの街

夏の陽ざしとモノクロームの街



 白と黒、そしてその中間にある無限階調、つまりさまざまな灰色だけで出来ている街というものを、夏の光のなかで夢想するのは楽しいものだ。白黒のフィルムで撮影するなら、どこのどのような街も、モノクロームの街になる。しかしそれは、いくら精密ではあっても、三十五ミリ・フィルムのなかの小さな二次元でしかない。
 現実の三次元の街でありつつ、白と黒、そしてさまざまな灰色以外の色を、まったく持っていない街。夏の光が降り注ぐときにそこを歩いたなら、どんな気持…

底本:『ホームタウン東京──どこにもない故郷を探す』ちくま文庫 二〇〇三年

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