『5Bの鉛筆で書いた』目次
『5Bの鉛筆で書いた』は1983年7月にPHP研究所から刊行、1985年7月に角川書店から文庫版が刊行されました。
雑誌『ポパイ』に第1号から連載している2ページの記事のためにぼくが書いた文章のうち、はじめのころのものが、この文庫のなかに収録してある。この頃のぼくは、ステドラーの5Bの鉛筆を使って、原稿用紙のます目いっぱいに字画をひきまわした字で、原稿を書いていた。このことから、タイトルは『5Bの鉛筆で書いた』とつけた。『ポパイ』の紙面では、『アメリカノロジー』というタイトルだ。
連載を書き進めるにあたって、方針のようなものを、ひとつだけつくった。出来るだけこまかな、小さなことについて書いていこう、という方針だ。こまかなことひとつを毎回の材料に選べば、具体的なその小さなことだけについて書けばいいのだから、大きなことを一般化して書くことによって誤解を招いたりすることをかなりうまく避けられるのではないだろうか、と思ったからだ。
(「文庫版あとがき」より)
日本の醤油をタレに使って焼きあげたハンバーガーは、キッコバーガーと言います。
『ニューズウィーク』誌の新製品紹介ページに私たちの近未来がはっきりと見える。
セヴンナップをアメリカで売り上げ第一位にしようとするソフト・ドリンク戦争。
一年分をまとめて読んだ『ロッキー・マウンテン・マガジン』と、マーゴ・ヘミングウェイのこと。
一九六二年、古き佳きアメリカがまだ『サタデー・イヴニング・ポスト』誌の表紙に描かれていたころ。
古い雑誌はタイム・マシーンだ、すてないで大事にとっておきたまえ、と誰かがどこかで言っていた。
日本の夏の夜、ディズニーランド・レコードを聴いてすごした二時間。ミッキーもドナルドも、みんな元気だった。
音楽ではないレコードにきざんである溝に、アメリカの心意気をいまでも見つけることができる。
ビートルズとともに七七号までつづいた『ザ・ビートルズ・ブック』というビートルズの専門月刊誌がかつてイギリスにあった。
全米ビートルズ大会に集まった人たちは、ビートルズ・メモラビリアの展示即売や交換に夢中だった。
土曜日の午後の映画館では、歌をうたうカウボーイの西部劇で、子供たちが大さわぎだった。
一九四〇年代の自動車について考えていたら、いまの自動車は原寸大のプラモデルのように思えてきた。
野球カードがない子供の日々なんて、とうてい完璧とは言いがたい。
昔のカレッジ・ボーイたちは、昔風の顔をして昔風のことを楽しんでいた、というお話。
ぼくは八歳になった。カブ・スカウトに入会した。ユニフォームを着ると、とても可愛かった。
ホノルルのダウン・タウン、キングス・ベーカリーから、ハワイアン・スィート・ブレッドをお届けします
風船ガムを自分の体よりも大きくふくらませることができるなんて、知らなかった。
アメリカには、キャンディ・バー風景というものが、たしかにあるようだ。
ならず者街道を旅したロバート・レッドフォードは、フロンティア時代の残り香のむこうに次の時代の巨大な影を見た。
やがてはカウボーイも、インディアンとおなじく保護居住地に囲われる身となるだろう、と本物の西部男が言っている。
古い建物を、こわさずにレストアして救ってあげるという、家づくりのグッド・アイディア。
ビーチコウミング・フォ・ジャパニーズ・グラス・フロウツ。なんのことだか、わかりますか。
ブルックス・ブラザーズのカタログの英語説明文をよく読むとこんなに勉強になるということです。
トリビアのペーパーバックのおかげで、へえ、そうだったのか、と言うのがぼくの口ぐせになろうとしている。
アメリカ映画を観てからその映画の小説化のペーパーバックを読むと、こまかなことがよくわかって面白い。※1
ユニット・フォトグラファーという不思議な写真家について、ほんのすこしだけお勉強してみた。
自動車のライセンス・プレートの読みかたとか、パーソナライズド・プレートのことなど。
風をかっさらうようにして、チョッパーがハイウェイをまっすぐに飛んでいく。よく冷えたバドワイザーを飲みたくなる。※2
ホンダの90CCでマイアミからLAまで走ったら、ガソリン代はなんと二〇ドルだったというハイウェイ・ストーリー。※3
日本の女性たちがアメリカについて書いた本をていねいに読むと面白い。ぜひ読んでみてください。
ロディオ・クイーン・オブ・アメリカ。二〇歳、身長五フィート九インチ。美人。いったいどんな女性なのだろう。
文庫のためのあとがき(1985年6月)(『あとがき』にリンクします。「1980年代」の『5Bの鉛筆で書いた』をクリック)
※1「アメリカ映画を観てからその映画の小説化のペーパーバックを読むと、こまかなことがよくわかって面白い。」は、「読んでから観ても、観てから読んでも、映画は面白い勉強だ」と改題、内容も一部改訂され『ブックストアで待ちあわせ』(1987)に収録。
※2「風をかっさらうようにして、チョッパーがハイウェイをまっすぐに飛んでいく。よく冷えたバドワイザーを飲みたくなる。」は「風をかっさらうようにして、チョッパーがハイウエイをまっすぐに飛んでいく。よく冷えたバドワイザーが手近にある」と改題されて「片岡義男エッセイ・コレクション『自分を語るアメリカ』」(1995)に収録。
※3「ホンダの90CCでマイアミからLAまで走ったら、ガソリン代はなんと二〇ドルだったというハイウェイ・ストーリー。」は、「ホンダの90CCでマイアミからLAまで走ったら、ガソリン代はなんと二十ドルだったというハイウエイ・ストーリー。」と改題され、「片岡義男エッセイ・コレクション『彼の後輪が滑った』(1996)」に収録。
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