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評論・エッセイ

吉永小百合の映画 『すべてが狂ってる』

『すべてが狂ってる』は出来の悪い映画であり、後味は良くない。なによりも強く印象に残るのは、どこと言わずぜんたいにおよんでいる、薄気味の悪さとしか言いようのない、不毛で閉鎖した関係が観客に伝える感触だ。そしてその不毛さは、現在の日本まで地続きだ。1960年ですでに、日本人がいかに言葉を失っているか、脚本家と監督は深く鋭く知り抜いていたのだろうか。

底本:『吉永小百合の映画』東京書籍 二〇〇四年

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