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評論・エッセイ

映画の中の昭和30年代 『娘・妻・母』

1950年代の成瀬巳喜男監督作品を十六本見て、そこに描かれた日本の昭和30年代を再検討する試みは、1960年公開の『娘・妻・母』でとりあえずの終わりを迎える。片岡義男がそこに見たのは、経済の問題で生活や自由を制限されるという日本の状況が既に、昭和30年代には顕在化していたことの確認だったのだろう。だから、そこから抜け出す希望を描かずに終わる成瀬作品の脚本に対して、とても厳しい目を向けることになる。その一方で、成瀬巳喜男監督が描く映画のリアリティが、完全にコントロールされた作られたフィクションだからこそ、濃厚にかつての日本をフィルムに残…

底本:『映画の中の昭和30年代──成瀬巳喜男が描いたあの時代と生活』草思社 二〇〇七年

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