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評論・エッセイ

映画の中の昭和30年代 『鰯雲』

昭和26年の『銀座化粧』では、生まれた土地から離れるという発想も、そうできる状況もなかった。翌年の『稲妻』では引越しが大きなテーマとして描かれる。さらに『夫婦』では引っ越した先での物語が扱われ、この昭和33年公開の『鰯雲』では、農家に生まれた三人の息子たちは全員、土地を離れて、それぞれに生活を送っている。かつて、家族親族の全員を賄うことが出来た農村共同体としての「本家」が力を失い、息子、娘たちはそれぞれの幸せを求めて、農業からも家からも離れていく。片岡義男は、そこに時代の変化と、それに逆らう力としての家からの独立を見ている。映画に新し…

底本:『映画の中の昭和30年代──成瀬巳喜男が描いたあの時代と生活』草思社 二〇〇七年

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